旅立ち
一晩中苦しみ、身体を痛がっていた彼の身体をずっと擦りながら涙がとまらなかった。
ほとんど喋れなかった彼がぽっんと呟いた
もっと生きて沢山美味しい物が食べたい…食べれないのがツライ…
そうだね!治ったら沢山美味しい物食べよう。
それが最後の言葉になってしまった。
やがて夜があけ彼の身体に異変がおこった。喉が乾いたらしく飲み物を飲んだ瞬間苦しみ出し倒れてしまった。急いでホテルのフロントへ電話し救急車の手配をしてもらった。
救急車が来るまで必死に名前を呼び続けた。
しかし、救急車が到着する少し前に私に持たれかかりながら彼は旅立ってしまった。旅立つ瞬間の彼の顔は苦しみからやっと解放されたかのように微笑んでいた。
彼の頭を撫でながら良く頑張ったね。そしてありがとう。と問いかけた。
病院での処置が終わりベッドで寝かされた彼はとても穏やかで今にも起きそうであった。
2人きりになり沢山彼にキスをし、そして永遠のサヨナラをした。
あれから暫くは涙が止まらない日々が続いた。もう二度と来ないLINE、二度とデートの約束が出来ない。何より彼がこの世に居ない現実と…
それでも残された者は前に進んで行くしか無い。彼は亡くなる直前まで、そして亡くなった直後も大切な事を教えてくれた。
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